アパートでひとり暮らしをする
ご老人に手招きされ、
気持ち悪いなと思いながらも
近付いた。
もっとこっち、こっちって。

「もう気付いてるんでしょ?」

といきなり言われ、
頭真っ白。

私、何かしたかな?
何のこと?

あ、comが引っ越したのに
挨拶してないから不機嫌だとか?
アパートの方は自治会未加入。
それ以外の家には1軒ずつ回り、
班長さんと挨拶回りをしていたけど。

続けて
「おかしいよね。
敷地の中から出てくるの見ちゃったんだよ。
あなたの家、防犯システムあるんだから、
本当はわかってるんでしょ?
空き巣に入られたって話を聞いた時にも
言うまいとは思ってたんだけど、
あれからもいろいろあって。」

おじさん、勘違いしてるよ。
それはcomのことで、
空き巣じゃない。
簡単に説明をする。

おじさんは
「違うよ、私が言ってるのは。
もう1軒あるでしょう。」

「え?もう家ないですよね。」

「あるじゃない。
私、見ちゃったの。
ちょっと待ってメモに記録してるから。
2014年8月5日午前10時半に
あなたの敷地から出てくる人を
見ちゃったんだよ。
私ね、ちょうど帰ってきたら
ばつの悪い顔してあっちから
言い訳を始めてね。
虫が出るから見てるんだとかなんとか。」

こういう話が続いた。
そしておじさんの家の灯油缶が
盗まれた話もしていた。

何度もオフレコで
とか口外しないでね

とか。

秘密を共有すること自体が
気持ち悪い。

そのひと とは
私が信頼している人だから。
ひとというより家族だから。

私はどちらか一方の話を
鵜呑みにしない。

灯油を盗まれたことから
誰かを疑い始めた。

灯油缶なんて持っていくかな。
袋小路でそんな大胆犯行。

ここには元々
会えば立ち話をするような
いいコミュニティが存在している。
20年の年月で築きあげたもの。
単身数年前から暮らし始めた
おじさんにはまだわからないかも
しれないけれど、
とても住み心地のいいところだ。

うちの空き巣はプロの犯行で、
関係のない話。

ドラマの世界のよう。
人の信頼関係が
誰かに壊されていくような。
壊れないけどね。

私を味方にしたいのか。

やだよ。

お宅の敷地から
って話、初めてじゃない。
うちの敷地になにか埋蔵されてる
噂でも?
それとも私のパンツが欲しいの?
あ、間違えた、娘の。
外には干してないから、ないよ。
侵入する人は、
草むしりをして帰ってくれればOK。



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